ミスト法とは 

[1] 川原村敏幸 京都大学大学院工学研究科博士論文

− ミスト法 −

 現在、「ミスト法」という、反応プロセスに関する研究を主体に行っております。  「ミスト法」とは、I. 溶液を何らかの手法で「霧(ミスト)状」とし、II. キャリアガス等によって運び、III. 反応させる、という非常に単純なプロセスからなる手法で、 特殊な部品や真空を必要とせず簡単な構成が可能で、汎用高純度試薬を原料として用いることができ、高エネルギ付与を必要としない、安全で低コストで省エネルギ省資源な手法です。

ミスト法とは。博士論文
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− 研究概略 −

 この手法を利用して、具体的には「金属酸化物薄膜の作製に関する研究」や「機能薄膜のエッチングに関する研究」を行っております。 また、それらの技術を応用し、現在の世の中に欠かせない電子・光デバイスの作製などを行っております。



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− 金属酸化物薄膜 −

 ところで、皆さんもご存じの通り、地球上では全ての物質が最終的には酸化されてしまいます。つまり「錆」てしまうわけです。しかし、逆にこの「錆」を利用できるデバイスがあればどうでしょうか。それが、金属酸化物薄膜を用いた電子・光デバイスです。
 金属酸化物薄膜は、最初から酸化されているため、信頼性・安定性が高く、環境性にも優れており、電子、光、磁気、熱、機械、化学などに関する様々な機能を兼ね備えた、非常に優れた機能薄膜であり、現在多くの電子・光デバイスへの応用が進められています。


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− 薄膜作製法 −

 ところで、薄膜を作製する技術は、現在すでに多くの手法が提案されております。これらを種類別に分けたものを以下の図に示します。 まず、気相成長法と液相成長法に大きく分けることができます。 さらに、気相成長法は非平衡な状況下で反応させる物理的気相成長(PVD)法と平衡反応を利用する化学的気相成長(CVD)法に分けることができます。 私が行っている「ミスト法」(薄膜を成長させるときは、「ミストデポジション法」と呼ぶ。)は、気相成長法と液相成長法の丁度中間的な手法であり、それぞれの利点を生かせる手法です。 現在気相成長法の多くが、真空条件下で薄膜を成長させるプロセスが主体で、装置を常にその状態に保たなければならず、非常に大きなエネルギを浪費しています。 また、真空で使用できる特殊原料を用いる必要があり、資源性や安全性にも多くの問題があります。 液相成長法においても、その仕組み上粘度の高い原料を利用しなければならず、大面積化などに対する制御性が疎いと言う問題があります。 そこで、私はこれらの問題点を解決する手法として、それぞれの利点を生かせる丁度中間的な手法:「ミストデポジション法」の開発を行っております。

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− 現在私が行っている研究内容一覧(抜粋) −

 この「ミスト法」に関する研究を行う中で、多くの分野に関する研究を行う必要があります。以下に私が現在行っている研究内容の一覧を示します。

  • ミストデポジション(MD)の応用研究    
    ミストを含む流体の挙動評価等、ミストという体について
  • ミストデポジション(MD)の応用開発
    改良MD、真空化、プラズマ適応、マイクロ波適応、エッチング etc..
  • ミストデポジション(MD)法による金属酸化物薄膜作製    
    酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ガリウム etc..
  • 金属酸化物薄膜の特性評価    
    結晶性、導電性
  • 大面積な基板へのミストデポジションの適応    
    トータルソルーション
  • ミストデポジションによって作製した酸化亜鉛薄膜のデバイス応用    
    紫外光(UV)センサー、薄膜トランジスタ、LED、太陽電池 etc…

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